「あのお店、なんかいいんだよね」
友人との会話で、そんな言葉を聞いたことがあるはずです。料理がおいしい、だけではない。店の雰囲気、店主の話し方、器の選び方。うまく言葉にできないけれど、人に勧めたくなる何かがあります。
ところが、当のお店に「なぜ選ばれていると思いますか」と聞くと、「味には自信があります」という答えが返ってきます。お客様が感じている魅力と、お店が伝えている魅力がずれているのです。
しかも、ずれたままホームページやSNSで「おいしさ」だけを伝え続けると、「なんかいい」と感じた人の言葉と、お店の言葉がかみ合いません。勧めたいのに、勧める言葉が見つからない。推されるチャンスが、そこで止まっています。
推されるために、新しい魅力をつくる必要はありません。お客様がすでに感じている「なんかいい」を言葉にし、提供価値と世界観として整理するだけです。自社のホームページと店頭と名刺を並べたとき、同じ会社だと一目で分かるでしょうか。
人に勧めてくれるお客様も、最初からファンだったわけではありません。どこかで知り、興味を持ち、比べて選び、何度か利用するうちに、いつしか人に話したくなる存在になった。その気持ちを支えているのが、提供価値と世界観です。
お客様は「出会う → 興味を持つ → 理解・比較する → 行動する → 関係を深める → ファンになる」という6つの段階を通って、お店や商品にたどり着きます。この流れを「セールスファネル(=ファネル)」と呼びます。買うまでの道のりを段階で捉える考え方はカスタマージャーニー※1として広く使われていて、それを実際の商売の流れに合わせて6つに整理したものです。一方通行ではありません。ファンになった方の紹介が、また新しい「出会う」を生んでいきます。

この記事で扱うのは、その最後、6つめにあたる⑥ファンになる=推奨の段階です。推されるための提供価値と世界観※2の整理でつまずきやすい、3つの落とし穴を見ていきます。
落とし穴1|機能の価値だけを語っている
「おいしい」「丈夫」「早い」。商品やサービスの機能の良さは、もちろん大切です。けれど、人が誰かに勧めるときに口にするのは、機能だけではありません。「行くと元気になる」「相談するとほっとする」。使ったときに感じる気持ちの価値、情緒的価値※3が、推したくなる理由になっています。
やること:常連のお客様3人に「当店に来ると、どんな気持ちになりますか」と聞き、答えを書き留める。
落とし穴2|接点ごとに、世界観がばらばら
店内は落ち着いた木の雰囲気なのに、チラシは原色で値引きを大きく打ち出している。ホームページは堅い言葉、SNSはくだけた言葉。接点ごとに印象が違うと、お客様の中で一つの像が結びません。推す人も、どんな店かを一言で説明できなくなります。
やること:ホームページ、SNS、チラシ、店頭の写真を1枚に並べ、色・言葉づかい・写真の雰囲気がそろっているかを確かめる。
落とし穴3|ファンが関わる余地がない
世界観が整っていても、お客様がただ眺めるだけでは、推す気持ちは育ちにくいものです。新しいメニューの試食会に招く、商品の名前を一緒に考える。小さくても関われる場があると、お客様は「自分の店」と感じ、人に話したくなります。
やること:常連のお客様が関われる小さな企画を1つ考え、次の3か月のうちに実施する日を決める。
推されるのは、言葉にできる店
推されるお店は、特別なことをしているわけではありません。お客様が感じている価値を言葉にし、どの接点でも同じ世界観で伝え、関われる場を用意している。それだけで、「なんかいい」は、人に話せる言葉に変わります。
推されるための提供価値と世界観を整えるために
- お客様が感じている魅力と、伝えている魅力はずれやすい
- 機能だけでなく、気持ちの価値を言葉にする
- すべての接点で、色・言葉・写真の世界観をそろえる
- ファンが関われる小さな場を用意する
ピクニックは、サービスファネルの会社です
私たちピクニックは、お客様の商売をファネルでとらえ、どこに伸びしろが眠っているかを分析し、その段階に合った手を一緒に考える会社です。
その「推される理由」を設計図にするのが 構想設計 です。顧客像と提供価値の整理 × 世界観と伝え方の統一 × ファンとの関係を育てる施策の設計までを伴走し、お客様が人に話したくなる会社の軸をつくります。
まずはホームページと店頭と名刺を並べたとき、同じ会社だと一目で分かるか。そこが見えれば、あとはそろえていくだけです。現状を一緒に確かめてみませんか。
注釈
※1 カスタマージャーニー:お客様が商品やサービスを知ってから、検討し、購入し、使い続けるまでの道のりを段階に分けて整理したもの。各段階で相手が何を考え、どこで迷うのかを見える形にするために使う。
※2 世界観:その会社や店らしさを形づくる、雰囲気・価値観・表現の統一されたイメージ。
※3 情緒的価値:商品やサービスを使ったときに感じる、安心・楽しさ・誇らしさなどの気持ちの面での価値。
