「お客様は、みんな大切にしています」
ある会社の打ち合わせで、社長がそう言います。どのお客様にも、同じように丁寧に。その姿勢に、社員もうなずきます。
ところが、売上の記録を並べてみると、景色が変わります。何年も取引が続き、紹介まで持ってきてくれるお客様がいる一方で、値引きの交渉に時間がかかり、毎回のように急な依頼が入るお客様もいる。同じように手をかけていても、関係の続き方はまったく違うのです。
しかも、手のかかる取引に時間を取られて、長く付き合いたいお客様への連絡が後回しになっている。気づいたときには、その人がほかの会社に移っていた、ということもあります。
全員を大切にすることは、悪いことではありません。けれど、限られた時間を誰に多く使うかを決めないと、大切にしたい人ほど離れていきます。自社に、この先10年付き合いたいお客様は何社いるでしょうか。
そもそも長く付き合っているお客様も、最初から深い関係だったわけではありません。どこかで自社を知り、比べて選び、取引を重ねるうちに、信頼が積み上がってきました。
お客様は「出会う → 興味を持つ → 理解・比較する → 行動する → 関係を深める → ファンになる」という6つの段階を通って、お店や商品にたどり着きます。この流れを「セールスファネル(=ファネル)」と呼びます。買うまでの道のりを段階で捉える考え方はカスタマージャーニー※1として広く使われていて、それを実際の商売の流れに合わせて6つに整理したものです。一方通行ではありません。ファンになった方の紹介が、また新しい「出会う」を生んでいきます。

この記事で扱うのは、その5つめにあたる⑤関係を深める=継続の段階です。「誰と長く付き合いたいか」を決めようとするとよく出る3つの声に、「実際は」を返していきます。
「お客様を選ぶなんて、失礼だ」——実際は
お客様を分けるという考え方に抵抗を感じるのは、自然なことです。来てくださる方は、どなたも大切な存在です。これは半分当たっています。
ただ、ここで決めるのは、断る相手ではなく、時間を多く使う相手です。対応の質はそろえたうえで、定期的な連絡や提案を、関係を深めたいお客様に集中させる。そうすることで、限られた時間を、いちばん関係が育つところに使えます。
やること:取引のあるお客様を書き出し、「この先も長く付き合いたい」と思う相手に印を付ける。
「売上が大きいお客様を選べばいい」——実際は
売上の大きさは、分かりやすい基準です。ただ、それだけで選ぶと、取引は大きくても手間が多く、利益が残りにくい相手を選んでしまうことがあります。
長く付き合いたい相手を見分けるときは、売上に加えて、取引が続いている年数、紹介をくれたかどうか、自社の強みを評価してくれているかも見ます。お客様が長い付き合いの中でもたらしてくれる価値は、顧客生涯価値※2とも呼ばれます。
やること:印を付けたお客様について、売上・取引年数・紹介の有無・評価してくれている点の4つを表にまとめる。
「決めても、やることは変わらない」——実際は
誰と長く付き合いたいかを決めても、日々の仕事は同じだと思われがちです。けれど、決めた瞬間から変わることがあります。どんな情報を届けるか、どんな商品を用意するか、誰に先に声をかけるか。判断に迷ったとき、「あのお客様ならどう感じるか」という基準ができるのです。
やること:長く付き合いたいお客様に共通する特徴を3つ書き出し、社内で共有する。
決めることは、手放すことではなく、深めること
「誰と長く付き合いたいか」を決めるのは、ほかのお客様を手放すためではありません。限られた時間と手間を、関係が育つところに注ぐためです。基準がそろえば社員一人ひとりの判断もそろい、長く付き合いたいお客様との関係は自然と深まっていきます。
「誰と長く付き合いたいか」を決めるために
- 全員に同じだけ時間を使うと、大切にしたい人ほど離れていく
- 決めるのは断る相手ではなく、時間を多く使う相手
- 売上だけでなく、取引年数や紹介、評価してくれている点も見る
- 長く付き合いたいお客様の特徴を、社内の判断基準にする
ピクニックは、サービスファネルの会社です
私たちピクニックは、お客様の商売をファネルでとらえ、どこに伸びしろが眠っているかを分析し、その段階に合った手を一緒に考える会社です。
その「誰と長く付き合うか」の整理を仕組みに変えるのが 構想設計 です。顧客像と市場の整理 × 提供価値と選ばれる理由の言語化 × 関係を深める施策の優先順位づけまでを伴走し、長く続くお客様との関係を設計します。
まずは自社に、この先10年付き合いたいお客様が何社いるか。そこが見えれば、あとはその人たちに時間を注ぐだけです。現状を一緒に確かめてみませんか。
注釈
※1 カスタマージャーニー:お客様が商品やサービスを知ってから、検討し、購入し、使い続けるまでの道のりを段階に分けて整理したもの。各段階で相手が何を考え、どこで迷うのかを見える形にするために使う。
※2 顧客生涯価値:一人のお客様が、取引を始めてから終えるまでの間に、自社にもたらす利益の合計。LTVとも呼ばれる。
